3度目の殺人を見たので感想を書く。
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映画【三度目の殺人】基本情報
2017年9月9日公開の日本映画。是枝裕和監督のオリジナル脚本による法廷サスペンス。
2017年8月30日より開催の第74回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門への正式出品作品。
作品、監督、役者共に数々の賞を受賞したことで話題に。
スタッフ・キャスト
原案・脚本・編集・監督- 是枝裕和
プロデューサー- 松崎薫、田口聖
重盛朋章- 福山雅治
三隅高司- 役所広司
山中咲江- 広瀬すず
山中美津江- 斉藤由貴
摂津大輔- 吉田鋼太郎
川島輝- 満島真之介
服部亜紀子- 松岡依都美
篠原一葵- 市川実日子
重盛彰久- 橋爪功
監督は『海街diary』『そして父になる』の是枝裕和監督。
『そして父になる』に続いての福山雅治主演映画です。
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『三度目の殺人』あらすじ
それは、ありふれた裁判のはずだった。
殺人の前科がある三隅(役所広司)が、解雇された工場の社長を殺し、火をつけた容疑で起訴された。犯行も自供し死刑はほぼ確実。
しかし、弁護を担当することになった重盛(福山雅治)は、なんとか無期懲役に持ち込むために調査を始める。何かが、おかしい。調査を進めるにつれ、死後森の中で違和感が生まれていく。
三隅の供述が会うたびに変わるのだ。
金目当ての私欲な殺人のはずが、週刊誌の取材では被害者の妻・美津江(斉藤由貴)に頼まれたと答え、動機さえも二転三転していく。さらには、被害者の娘・咲江(広瀬すず)と三隅の接点が浮かび上がる。
重盛がふたりの関係を探っているうちに、ある秘密にたどり着く。なぜ殺したのか?本当に彼が殺したのか?
得体の知れない三隅の闇に呑み込まれていく重盛。
弁護に必ずしも真実は必要ない。
そう信じていた弁護士が、初めて心の底から知りたいと願う。
その先に待ち受ける慟哭の真実とは?
(公式ホームページ引用 https://gaga.ne.jp/sandome/)
ポイントでネタバレあらすじ
- 三隅は週刊誌の取材に勝手に応じ「被害者の妻に殺害を依頼されて殺害した」と話す。
重盛はその内容に乗っかり、被害者の妻・山中美津江を主犯として公判準備をすすめていく。 - 三隅の身辺調査をしていた重盛は、三隅と被害者の娘山中咲江が頻繁に会っていたことに気がつく。
咲江は殺害された実の父親に性的被害にあっていたことを重盛に告白する。
そして「三隅は自分のために父を殺した」と言う。 - 咲江は証言台に立つことを決意する。
しかし三隅は「咲江はよく嘘をつく子です」と言い出した。 - さらに三隅は美津江から振り込まれた50万円の真実を話す。
振り込まれた50万円は工場の食品偽造を手伝った金だった。
それを聞いた重盛は「母親をさばいたんですか」と問う。
咲江が父親に性的虐待されていたことを見て見ぬフリをしたので本当のことを話さず、美津江がバッシングされるように仕向けた。 - ここにきて三隅は山中の殺害を否定し始める。
重盛は戸惑う。 - そして三隅に死刑判決が下された。
供述をコロコロ変えたことが敗因である。 - しばらくして、重盛は三隅の面会に行く。
そして三隅に事件の真実を問う。
三隅が犯行を否認しはじめたのは咲江を証言台に立たせないためではないのか?
だが三隅は「それは僕への質問ですか?」と。
「あなたはそう考えたからわたしの否認に乗ったのですか?」
「違うのかな?」
「でもいい話ですね。それはいい話だ。
わたしはずっと生まれてこなければいいと思ってました。」
「なぜですか?」
「わたしは傷つけるんです。いるだけで。周りの人を。
もし、今、重盛さんが話したことが本当なら
こんなわたしでも誰かの役に立つことが出来る。」
「それがたとえ、人殺しでも?」
「ええ。もし本当なら、ですけどね」
「そして、それはつまり・・・。
僕がそう思いたいだけってことですか?」
「ダメですよ。重盛さん、僕みたいな人殺しにそんなこと期待しても」
「あなたはただの器?」
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『三度目の殺人』の感想と考察
観客にラストを選ばせる是枝監督。本当に好き。
三隅は本物の人殺しなのか?
それとも咲江を救うために嘘をついているのか?
本当に分からなくなる・・・こんがらがる・・・すごい。
山中光男を殺した犯人=咲江(広瀬すず)説。
一瞬だが、わたしも重盛並みにいい話を思いついた。
真犯人は咲江で、三隅は咲江を庇うためにサイコパスを演じてる説!
レイプしてきた相手を殺したくなる気持ちは大いに分かる。動機は十分にある。
真犯人は咲江で三隅はかわいそうな咲江を庇うために、犯人役を演じているのではないかと。
でもこの説、すぐに打ち砕かれました。
咲江はとても人を殺した精神状態に見えなかった。
もともとミステリアスな少女のようですが、流石にJKが人を殺してあれだけ落ち着いているっていうのはありえないですね。
ってことで、重盛の『三隅は咲江を証言台に立たせたくないので犯行を否認した』説が濃厚。
『三度目の殺人』の『三度目』とは?
三隅は30年前に北海道で殺人事件を犯しています。
今回は2回目の犯行。
『三度目』の殺人とはなんなんでしょう?
わたしは三隅の死刑判決のことだと解釈しています。
作中では摂津(吉田鋼太郎)が
「立場違うのは当たり前だから」
「裁判官だって数こなさないと評価に響く」
「立場違うけどみんな司法っていう船に乗ってるわけだから」
などなど、裁判について語っています。
その司法という船に乗っている人の中で、三隅が本当に犯人かどうか興味を持っている人は重盛しかいないように、わたしには見えた。
その重盛も元々は【弁護に必ずしも真実は必要ない。】という考えの持ち主。
つまりこれは『司法』という船に乗っている全員が殺人者というメッセージではないかと。
まさかの死刑制度批判・・・?
批判とまではいかなくとも我々観客に訴えかけるものは感じました。
そして三隅の「あなたはそう考えたからわたしの否認に乗ったのですか?」というセリフも深い。
重盛は三隅が咲江をかばっていると思っていなかったら否認を信じていなかったってことですからね。
最終的に三隅は「いい話ですね」と好意的に受け取ってましたが、本当に真犯人が三隅ではなく、さらに咲江のことも庇っていなかったら、最後のセリフは胸が痛すぎる。
「わたしは傷つけるんです。いるだけで、周りの人を。
もし、今、重盛さんが話したことが本当なら
こんなわたしでも誰かの役に立つことが出来る。」
もし三隅が無実の殺人で死刑になるのだとしたら、これは間違いなく三度目の『殺人』ですね。
そしてこの最後のセリフもかわいそすぎる。
でもまあ、わたしは三隅は咲江を庇っている説を推しているので、犯人は三隅だとは思っています。
このセリフも「前科のある人殺しだけど咲江を救いたかった。役に立ちたかった」という意味なのだと解釈してます。
本作は父娘の話でもある
重盛の心境の変化もこの映画の見どころだと思っています。
重盛はもともと【弁護に必ずしも真実は必要ない。】という考えで、結果が全ての弁護士でした。
弁護士はそういう仕事なのである程度は仕方ないとは思うのですが、そんな重盛が変化していく姿は、心無い弁護士から1人の人間に変わっていく感じがして好きでした。
鬼の心を持って働いてる弁護士さんを批判しているわけではなくて、重盛の人間らしさに痺れた。
そんな重盛はプライベートで離婚協議中。
中学生の娘がいますが、娘は万引きで補導されかけたりと家庭円満という風ではありません。
重盛は殺された山中のことを「あんなやつ殺されて当然」とまで言うようになっていました。
おそらく、娘を持つ父親として、思うところがあったのではないかと。
そしてそれは三隅も同じ。
三隅にも娘がいた。三隅の娘も咲江と同じく足が不自由だったらしい。
三隅は娘と咲江を重ねていて咲江を救おうとしていた。
それは重盛も同じ。
同じ父親として一人の少女を救いたいと思った。
結局のところ真実は分からないけど、この映画は「いい話」だとわたしは信じてます。
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『三度目の殺人』まとめ&満足度
満足度 100点満点中 90点
『三度目の殺人』。是枝監督作品で1番好きです。
是枝監督の映画を観るといつも観る側が試されてる感じがします。
ですがこの映画は割と簡単だったと思う。
観客に判断を委ねるってところはいつもの是枝監督らしいけど「こういう風にも見えるし、こういう風に見えるよ」と作中で分かりやすく教えてくれているところが、悩みやすいし考えやすかった。
ただ、法廷サスペンスって括りなので犯人が分かってスッキリ爽快系を望んでいる人は肩透かしを食らったことでしょうw
スッキリどころかモヤモヤするラストw