漫画【死役所】感想と考察。死んだ後どうなるのか?が描かれた傑作漫画【お客様は仏様です】

 

最近読んだ漫画で面白かったのが月刊コミック@バンチで連載中のあずみきしさん「死役所」

おもしろすぎて一気読みしました。

『此岸と彼岸の境界に存在する、市役所ならぬ「死役所」を舞台にあらゆる原因で死んでしまった人が訪れ死の手続きをする』という物語なのですが、死んだ人たちの物語が濃く、闇が深くて考えさせられるものばかり。

悲しい話もあれば、心温まる話もあり非常に楽しめる漫画でした!
特に気になったエピソードや、本漫画のレギュラー登場人物の「死役所職員」について考察していきます。

 

漫画【死役所】とは?

あずみきし氏により2013年11月号から「月刊コミック@バンチ」で連載開始された漫画。

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あらすじ

此岸と彼岸の境界に存在する、市役所ならぬ「死役所」。ここには、自殺、他殺、病死、事故死、寿命、死産までありとあらゆる人が訪れ、死後に自分の死の手続きをする場所である。死役所職員は全員同じ理由で死亡しており、何故死後職員として働くことになったのか、そもそも死役所の存在理由とは…死役所を訪れる人や職員が死んでなお「自分の人生はなんだったのか」と考えている物語である。(ウィキペディア引用)

 

ここからネタバレを含みますので、未読の方は注意してください。

死役所職員

死役所職員についてですが、全員死刑囚です。
その事実を知った時には驚きでしたし、すんごい設定だなーと思いました。

それぞれ様々な事情を抱えて死刑になった人物ばかりですが、死刑囚を美化している印象はあります。
ただ、本当にクズな死刑囚も存在していてそういう人たちは『職員』になることはせず『冥土の道』行きを選択します。
1巻5条に登場した「江越」も働きたくないと理由で殺人を犯したので、死んでまで働くことを嫌がり『冥土の道』行きを選択しました。

『冥土の道』は一生成仏することせず何もない真っ暗な道で永遠に彷徨うというものです。
考えただけで気が狂いそう。

主人公「シ村」

部署 – 総合案内

眼鏡に七三分けで、常に笑顔を浮かべた謎の男。
『お客様は仏様です』をモットーにしているが慇懃無礼で嫌味で皮肉っぽい言い回しが多い。
実は冤罪で死刑になったため、「成仏申請書」を出せば成仏できる立場だがあえてそれを拒んでいる。
娘の死の真相を追って、カルト集団「加護の会」の動向を追っている様子。
7巻30条から32条で死役所に送られた寺井修斗に「市村幸子」について尋ねるなど、生前の妻の動向を探っているようです。
妻を庇って冤罪の罪を被ったのではないかと推測してます。

主な職員たち。

「ニシ川」

部署 – 自殺課
本作品のヒロイン。ショートカットで唇がふっくらしており口元にホクロがある。
生前、3人の不倫相手を殺害しハサミで口を裂いた連続殺人者である。
6巻28条29条で過去にニシ川が殺した相手の家族が死役所に送られてくるが、殺人の動機などは本作で明らかにされていません。
「何を考えているのかわからない」謎の人物でもあります。

「イシ間」

部署 – 他殺課
スキンヘッドの強面だが人情に厚く涙もろい。
生前は妻に先立たれ子供もなかったため、姪・ミチを娘のように可愛がっていたが、ミチを強姦した少年二人を殺害してしまう。裁判ではミチが強姦された事実を隠し、「畑を荒らされたから殺した」と主張し、死刑となった。
8巻39条で成仏した。
生前のエピソードが度々回想で書かれたり、葛藤やジレンマなどの心情が描写され1番人間らしい職員だったと思う。
サイコパス気質な職員ばかりの中、唯一の良心を感じた。

「ハヤシ」

部署 – 生活事故死課
長めの茶髪に、語尾に「す」をつける言葉遣いが特徴の今風な青年。
実は祖父と母の間にできた子供だったという出生の秘密に苦しみ、それが原因で妻が不倫し子供をもうけていたことを知り逆上、妻、不倫相手、子供を殺害した。
殺人については「相手が悪い」と思っており反省は全くしていなかったが、三樹ミチルの言葉をきっかけに反省しようとする。
この「反省しようとする」行為こそが死役所の職員が死刑囚である理由なんじゃないかなと思います。
ただ、生前から許せないヤツがいたら窓から落とすなどとんでもない行為をしていたので、ハヤシさんはサイコパス気質なのかと思いました。

「岩シ水」

部署 – 人為災害死課
生前は浪人生でネットカフェ難民でストレスでネットカフェに放火し10人を焼死させた。
動機は「ネットカフェをなくしたかったから」としており、本人は殺意を明確に否定している。
岩シ水さんは異常なまでに厳しい父親の元で育っており同情の面はあるけど、あまりに多い被害者の数だし死刑は免れないよね。

「ハシ本」

部署 – 他殺課
7巻第34条から登場した新入職員。
目まで覆うほどの長髪で無口。
不満が爆発するとカッターを振り回したりと狂暴化します。
まだ生前のエピソードなどは書かれておらず気になる存在です。
9巻44条で引きこもりの息子を残し死亡した小見温江の
「せやから私言うたんです。あんたは立ち直れるお母さん待ってるからって」
と言うセリフを聞いて取り乱した様子を見せたことから生前はひきこもりだったのではないかと推測

 

【死役所】感想・考察

本作は、死役所を訪れる人や職員が死んでなお「自分の人生はなんだったのか」と考えている物語。

死について考えさせられる作品になっており、心にずっしりくるものがあって読み応え抜群の漫画になっています。

死役所に送られてきた死んだ人たちのエピソードの中で気になったものをあげていきます。

2巻収録6条・7条「腐ったアヒル」

交通事故で目が見えなくなった漫画家の話。

塙保は漫画家志望で編集者に出入りしていたが、ある日編集者の直入から人気小説家の江戸川アラン原作の漫画「アヒルロード」の作画をしないかと持ちかけられる。
塙は作画を担当することになったが、江戸川アランの話作りのアイデアに羨望していた。
直入から江戸川アランはバイクのツーリングをしている時に話を思いついたと聞いた塙は度々ツーリングをするようになるが、ある日事故を起こしてしまい失明してしまう。

もう漫画が描けなくなってしまった塙。
ある日、江戸川アラン原作漫画「アヒルロード」で作画担当は変更になったと直入から電話が入る。その直後、塙は崖から転落死してしまった。

漫画家なのに目が見えなくなってしまった塙。
誰もが自殺と疑い、現世でも「自殺か?」と噂されています。

ですが塙は自殺ではありませんでした。
死にたいと思ったことはあるが、死のうとは思わなかった。
なぜなら漫画を描きたかったから。
絵はダメでも話ならなんとかなると思い、リハビリでパソコンのキーボードの練習ばかりしていた塙。

現世で「自殺」と思われることを「少し悔しいなぁ」と言う姿には、心打たれました。

ここで救われたのが、現世での「アヒルロード」原作者江戸川アランと編集者直入の会話シーンが描かれたこと。

塙の死を「自殺なんかじゃないですよ」と江戸川アランは言い切ります。

「彼は絵を描けなくなり絶望したかもしれません けれど世界が変わったことにより 以前の彼には描けなかったような話をきっと描けるようになっている 彼には僕の世界を充分に表現してもらいました 今度は彼自身の世界を表現できる時だったんです そんな彼が自らのチャンスを潰すようなことをすると思いますか? 彼は自殺なんてしていません 絶対に」

この言葉には救われました。
塙くんに伝えたい‥。

直入に「塙くんと会ったことあるんですか?」と聞かれた江戸川アランは「彼とは作品の中でいつも会話をしていましたから」と。

もう江戸川先生かっこよすぎる。格言者すぎるでしょ。

漫画家である「あずみきし」さんだからこそ描けた話だと思います。
夢半ばにして死んでしまった塙の気持ちを考えるといたたまれないし、原作者と作画者の絆にも涙。この話では、泣いてしまいました。

2巻収録8条「男やもめ」

この話は非常に印象的だった。

妻に先立たれた夫の話。
妻の襟川典子は友好的で老人会やグランドゴルフ手芸会などに積極的に参加し友達も多かく、入院している典子の見舞いには友人が大勢来ていた。
「退院したらお礼せんといけんね」と言い残したまま典子は死んでしまう。

典子の死後、息子に「一緒に住むか?」と言われるが「せんといけんことがある」と襟川は断ります。

襟川は妻が言い残した通り、典子の友人たちにお礼に回ります。

老人会の友達に肉まんを配り、グランドゴルフ大会にも参加。

ある日襟川は心筋梗塞で倒れ、「死役所」へたどり着く。

「男やもめに蛆がわき 女やもめに花が咲く」という諺があるが、
「自分はそうならなかった。かみさんが死んでから人付き合いが増えた」と言う襟川。

ここまで読めばとてもいい話なのですが、

襟川は嫌われていました。

生前典子も心配していましたが、襟川は人付き合いが下手。
余計なことを言って相手の気を悪くさせたり、自分の思った返事がないと怒ったりと、少々難ありです。

典子の死後も本人はうまく人付き合いしていた気でいたようですが、
グランドゴルフ大会では「あんたの教え方が悪い」、老人会の友達には「そげ肥えちょるくせに遠慮とかするんなや」などの発言をしてうまく交友関係を築けていませんでした。

こうして周りの人間に嫌われまくった襟川は、心筋梗塞で倒れ、死体に蛆がわく頃になっても誰にも見つけてもらえず、孤独死します。

めちゃくちゃ後味悪いし、かなり怖い話でした。
ですが、本人は悩んだり苦しんだりせず「かみさんが死んでから人付き合いが増えて生き生きしちょった」と語っていますし、嫌われてることに気づかなかったなら幸せな人生だったのではないでしょうか‥。
鈍感力って大事ね。

4巻16条17条「吊るす者・吊るされる者」

元刑務官の杉が病死で死役所に送られてくる。

杉は生前、拘置所で働いていた。

絶望して死を待つだけの死刑囚・沼尻を気にかけ、せめて処刑まで心安らかに生きてほしいと願い、花を贈ったり、「何かやってみないか」と提案するなど尽力する。
しかし沼尻の死刑執行の担当者に推薦され、沼尻の死を目の当たりにし、一年後には刑務官を辞めてしまう。

「吊るす者・吊るされる者」というタイトルからも分かるように「吊るす側」の葛藤が描かれていて、とても考えさせられました。

「彼らは罪を犯した でも 生まれもっての悪人なんていない」

という言葉はその通りだと思いますが、杉の上司の「自分の家族が殺されても言えるのか」という意見も分かる。

この答えが出ない重すぎるテーマを漫画で読むことになるとは思わなかったし、とても考えさせられた話でした。

 

まとめ

死んだ後の世界で「自分の人生はなんだったのか」と考える物語であるこの「死役所」という作品。
こんなに考えさせられるテーマなのに、死役所の職員は全員死刑囚と来た。さらに重いテーマである。

読んだ後に考えさせられる話ばかりで、読み応え抜群の漫画だと思います。
オススメ度星5つ付けれる作品になっているので、未読の方にはぜひ読んで欲しい漫画です。

まだまだ「死役所」の名作エピソードはたくさんあるのですが、文字数がそろそろ大変なので、またおいおい書こうと思います。